ハロー、ハルおじいちゃん
11/17/2015一日中動き回っていたことと、久しぶりにはいたジーンズのウエストが窮屈だったことが重なって、1万四千円の2階席に座りながら、眠気とウエストのきつさと格闘した土曜日のソワレは、あんまり楽しめなかった。
「この舞台はいったい何なの?」ミュージカルではなく、コンサートでもない。ショー?いやいや公式HPには「ミュージカル」と書いてある。
海外のスペシャルなメンバーが揃う、日本初演の舞台『プリンス・オブ・ブロードウェイ』、鬼才で巨匠で、ミュージカル好きならその名前は一度は聞いたことがあるハロルド・プリンス(87)が何やら新作を日本で作るらしい。
雑誌やネットで情報を目にし始めたのはだいぶ前、遂に幕が開けて観に行ったら、良くわからなかったんだ。なんてこと!
宝塚を退団した超人気スター柚希さんの、退団後初の舞台ともあって、宝塚ファンからの注目も高い。ミュージカル好きだけど、自分の好きな路線しか目に入らない私に、出演者への事前知識は乏しくて、「この舞台は、さてさて?」ってなってしまった。
私の眠気をよそに、会場は賑わっていて、拍手喝采、歓喜の声があがってる。いっぽう高額なチケットが少し値を落として、ネットで流れているのも事実。実は2週間後のチケットも持っていたので、「これ、売れない...」と早々にチケットを嫁に出すことをあきらめ、再び観に行くことにしたフライデーナイト。ぴあの先行でとったそのチケットはシアターオーブ3階席の最後列、センターど真ん中。劇場の後ろの席から金曜日の夜に芝居を観ることを「フライデー・ロングショット」という。
友人からパンフレットを借りて、読んだ。プリンス・オブ・ブロードウェイ(POB)について。へー、ほー、は~と読み込みながら2回目の観劇。
たちまち面白さに引込まれた。オペラグラスを覗きながら、どんどん面白くなった。
パンフレットには、ブロードウェイミュージカル界で最も偉大な功績を成し遂げた男、ハルおじいちゃんが、どうしてこの舞台を作ったのかが見開きに細かい字で書いてあった。
その言葉を胸に、観劇を進めると、ハルおじいいちゃんが手掛けた過去の作品から選び抜かれた曲を、有名海外俳優が歌う舞台、という認識が消えた。
それよりも「ハルおじいちゃんの役」として声で出演する市村正親さんのナレーションが大事だと思った。すべてを形作って繋いでいるのは、市村さんが語るハルおじいちゃんからのメッセージだ。
しかもこの舞台、ステージのプロセニアム・アーチといって、客席からみて舞台を額縁のように区切る枠が、絵画を入れたり、写真を入れたりするような、本当の「額縁」をイメージして作られている。四角い額縁を半分に切って、ステージの枠として立っている。
POBはそもそも、額縁に入って飾られているんだ。生のステージを更に額縁で囲っていることが面白かった。これは、ハルおじいちゃんの歴史と、思い出と、出会いのショーなんだ。
ハルおじいちゃんが、今や大有名人となったプロデューサーや作曲家と出会って、ミュージカルを作ってきた歴史。その時の時代や、運と縁が舞台を通して最後まで発信され続ける。
いたってシンプルな舞台装置も、プロジェクションマッピングのような効果や、映像を通して、場面に力を生む。照明とスモークで幻想的な世界が広がっていた。
長い年月を生き抜いてきたハルおじいちゃん。沢山の作品を作り上げる過程で、芸術的な作品が、あたるわけでもないし、そうじゃない作品がヒットしたりする。連続で当たらないこともあるし。それでもミュージカルを作り続ける生き様。
多くのミュージカルから選ばれた曲も、人とのつながりや愛を考えるナンバーに思えた。知識不足だけど好きだったシーンは、ヤベックさんのタップシーン、物凄くカッコよかった!それからミュージカル ショーボードからのナンバーCan't Help Lovin' Dat Man キャント・ヘルプ・ラヴィン・ダッド・マン。
ねえ、ちょっと聞いて、私はあの人がすきなのよ
なぜだかはっきりわからないわ
あの人を好きになる理由なんかないんだもの
きっと天使たちが仕組んだんでしょう・・・
わたしはあの人を愛さずにはいられないのよ
なんだかとても好きになった曲と、歌詞。
思い出すと、オープニングも、キャバレーのシーンも、ソー・ワットという曲も2幕はじめも、とてもたまらない感動がよみがえるのだけど、今回書きたいのは各部分の感動ではなくて、この作品が何なのかを掴んだ感想なので、大枠を残したい。
ラストシーンは、カラフルな普通の洋服をまとった出演者が一人ずつ歌いながら登場する、人生も色んなことがあるけれど、楽しもう。時をまて、輝く日をまて。必ず来るから、運を掴めと語ってくる。
これは市村さんが語るハロルドプリンスの言葉が大切なんだ。各演目も勿論だけど、ショーとして、全てを繋ぐのは市村プリンスの声。
そしてパンフレットを読み返すと、そのメッセージが各出演者や制作人のメッセージの中に織り込まれているし、ハルおじいいちゃんからも発信されている。
おおおお、この舞台はなんて面白くって、暖かくて、そして今も生きるミュージカル界の巨匠の歴史であり、若者たちへのメッセージだ。との感想を持った2回目の観劇となりました。
ミュージカルナンバーをおさえて、もう一度行きたくなってる今日この頃です。
POBに関し友人との疑問点おさらい。
・なぜこんなに豪華なキャストなの?
・なぜ日本で?
・なぜ一旦プロジェクトが止まったの?
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丸の内朝大学院 ミュージカル研究科所属
ミュージカル研究会1期
2014 丸の内朝大学 ミュージカル観劇クラス修了
2015 丸の内朝大学ミュージカル鑑賞クラス修了
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